森と怪物(2)

そんな中、残った村の男たちが総出で森を大捜索すると言い出しました。

小さな村で、子供だけでなくあれだけの若者までいなくなっては生活も成り立ちません。村人みなで協力して、一刻も早く彼らを連れて帰る必要があるでしょう。

しかし、これ以上行方不明の村人を増やす訳にはいきません。もしまた探しに行ったまま帰ってこなかったら――村人たちは顔を見合わせます。

そして結局、男たちを森へと送り出すことになりました。危険を感じたら、すぐ村に戻るようにと約束して。

それからしばらくして、森から若者が二人、ひどく焦った様子で息を切らして出てきました。どうやら森から戻ってきたのはこの二人だけのようです。

「一体何があったんだい!?」

村に残っていた女たちは、すぐさま彼らに詰め寄りました。

「みんなで森の中を歩いてたらよお……綺麗な姉ちゃんたちが出てきて」
「それでみんなその姉ちゃんたちに着いてって、どんどん森の奥の方に行っちまったんだ」
「俺たち何だか怖くなって、慌てて逃げ帰ってきたんだ」

二人は何とか事の顛末を話し終えると、
「でも姉ちゃんたち、綺麗だったなあ……」
と、ぼんやりし始めてしまいました。

その話を聞くと、夫や恋人が森から帰ってこない女たちは怒り出しました。

「美女だか何だか知らないけど、一体どこで何やってるのよ」
「せっかく心配してやってたのに。まったく、とんだ怪物もいたもんだわ」

女たちはみるみるうちに不機嫌そうな様子になっていきます。

「一体どんな女だったのよ!」
と若者二人に訊ねてみても、二人はまだぼんやりしたまま、
「別嬪だったなあ」
「ああ」
と恍惚とした表情で答えるだけでした。

怒りが収まらない女たちは、とうとう自分たちで、男たちを森から連れ戻しに行くことにしました。

次の日になると、いつの間にか森から帰ってきたあの若者二人が姿を消していました。近所の人も、誰も彼らの行方が分かりません。

「私、あの二人が森に向かっていくところを見たわ」

村の外れに住む少女が言いました。

「遠くてよく見えなかったけど、何だか様子が変だった」

女たちは、そういえば彼らが昨日から、心ここにあらずといった様子であったことを思い出しました。それも、恐るべき森の怪物たちの力なのでしょうか。

いよいよ、村の女たちは森へと乗り込んでいきます。女たちはみな険しい表情で、中には武器代わりの農具を手に持つ者までいます。

家族や恋人を取り戻すため、決意を固めた女たちは、薄暗い森の中をどんどん進んでいきます。

しばらく歩き続けると、視界がよりいっそう暗くなってきました。どうやら、ずいぶんと奥の方まで来たようです。

すると、今までしんと静まりかえっていた森の中に、何かの気配がかすかに感じ取れるようになりました。

女たちは立ち止まり、身構えます。